「人が輝き続ける場の創造」フリーランスのコンサルタントとしてお客様と共に成長

作成日:2016年8月5日(金)
更新日:2018年6月13日(水)

”割に合わない”と感じる仕事を任された時、あなたならその機会をどう捉えますか?

「コンサルタントのワークスタイル」第10回目のインタビューは下田令雄成(しもだ れおな)さん。
コンサルティングファーム アクセンチュアを経て起業し、人材開発や組織開発を行う株式会社シャイニングを設立。自ら講師としての活動もしながら様々な「場づくり」に取り組んでいらっしゃいます。チェンジマネジメントの分野に進まれたきっかけや、仕事をする上で大切にしていること、フリーランスの独立コンサルタントに必要な資質など、誰もが惹きこまれるようなお話を伺ってきました。

下田 令雄成

今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント

横浜国立大学大学院修了後、アクセンチュア(旧アンダーセン・コンサルティング)を経て独立。2005年、『人が輝きつづける場の創造』をミッションに株式会社シャイニングを設立し、企業・行政・教育機関を対象に人財育成研修および組織開発コンサルティングに従事。リーダーシップ強化&組織活性化を促進する独自の方法論“Visionary Leadership”を展開し、構成メンバーの思考/行動特性の分析に基づき、個性が最大限に活かされる組織設計および開発支援を行っている。また、複数の非営利組織の経営にも参画し、リーダーシップ研究や組織開発も実践中。 株式会社シャイニング:http://www.shining-world.com/

下田 令雄成

「人の成長を見るのが好き」 その思いが今の仕事の原点

ーまずはこれまでのキャリアについて簡単に教えてください。

下田さん(以下、敬称略):2000年に新卒でアンダーセン・コンサルティング、現アクセンチュアに入社して、チェンジマネジメント部門で組織風土改革や業務プロセス改善などのプロジェクトに携わりました。2003年にアクセンチュアを辞めて、しばらくフリーランスのテニスコーチとして働いた後、2005年に現在の株式会社シャイニングを設立しました。

ー起業はいつ頃から考えていて、何をきっかけに踏み出されたのでしょうか?

下田:学生時代にアルバイトでテニスコーチをやっていた頃に、スクールの運営方針に関する改善策を生意気にも社員のマネージャーに提案したという過去がありまして(笑)。そういう仕組みを考えるのが好きだったので、将来はそれを仕事にしたい、経営をしたいと思うようになりました。そこで、最初から独立・起業を見据えて経営の勉強をするつもりでアクセンチュアに入りました。でも実際に入社すると日々の仕事で精一杯だったので勉強や起業準備ができる状況ではなく、これではいけないと経営大学院に進学するつもりで会社を辞めたんです。でも結局「大学時代もたいして勉強しなかったんだから、大学院に入っても同じことになるのでは」と思ったんですね。それで改めて考え直した時に、テニスコーチ時代の「場を創る」という活動がとても楽しかったことを思い出して、進学はせずにテニス関連の事業運営をしてみようと考え、フリーランスのテニスコーチとして、もう一度スクールに戻ったんです。そんな中、たまたま誘われて足を運んだ異業種交流会で出逢った方から、小中高校での起業家教育の講師の仕事を紹介されました。それがきっかけで、企業の研修講師も担当する機会に恵まれ、多くの案件依頼が来るようになりました。その後、単に講師を担当するだけではなく、研修内容も自分で作った方がより面白いんじゃないかな!?と考え会社を設立しました。

ー最初からチェンジマネジメントの分野にご興味があったのでしょうか?

下田:就職するまではチェンジマネジメントの分野に対し、特に興味があるとは思っていなかったんですよ。ただ、テニスコーチの仕事を通して人の成長を見るのは学生時代から好きだったので、今になって考えればチェンジマネジメントに関心はあったんだと思います。そこに、アクセンチュアでの仕事を通して理論体系やコンサルティングの手法が加わったという感じですね。

ー独立・起業してからは人材開発や組織開発をメインに活動していらっしゃるんですね。

下田:はい、企業研修においては、自分でも講師をやりますし、講師をキャスティングして場を創る案件もあります。いろんなご縁で経営者団体やNPO法人での活動もしています。昨年まで、JC(東京青年会議所)にも所属していて、自分の時間の8割を社会貢献活動に割いていた時期もあったくらいに入り込んでやっていたのですが、これが仕事上でも非常に役に立ちました。経営コンサルタントとして仕事をしていると、組織をマネジメントしたり、リーダーシップを発揮したりといった「最近の経験」が重要になってくるのですが、JCでいろんな経営者が集まる場をまとめる活動を試行錯誤しながら続けていたことで、経営者や管理職を対象としたリーダーシップ研修や戦略立案会議などで当事者のみなさんの置かれた状況や気持ちがとてもよく分かるようになりました。JCは多くの時間や労力など、コストもかかりますが、そういった面でとても良い経験になりました。

割に合わなそうな仕事こそ"チャンス"と捉える

ー現在の営業スタイルを教えてください。

下田:お客様からの仕事のご紹介がメインです。他には運営を担当している経営者のテニス会に参加している方からのご依頼もあるのですが、それよりも、そのお客様のところの案件を依頼されることが多いです。ですので、フリーランスとして営業して仕事をいただくことはほとんどなく、良好な信頼関係を築けている相手から何かあった時にご依頼していただける、というケースが多いですね。そういう状況にするために、自分が何をやっている人間かを認知しておいていただけるように意識しています。

ー下田さんから見た優秀な講師とはどんな方でしょうか?

下田:世間で言われる「優秀」の定義とは異なるかもしれませんが、弊社では、優秀であると同時に弊社のコンセプトである「人が輝きつづける場の創造」を具現化できる方に講師をお願いしています。まず必要な資質は話が聴けることですね。主役である受講者やクライアントの話が聴けて、その方々が気づきや学びを得られる場が創れて、最終的に皆さんが行動に移せるところまで落とし込める、そういった一連のストーリーを組み立てつつファシリテーションができる方は、優秀と言えるのではないでしょうか。噺家さんのように話が面白い講師の方もいるんですが、最終的に「あぁ、面白かった」だけで終わってしまっては、いくら評価が高くても弊社から見ると何の価値も提供できていないということになってしまうので、個人的に好きであってもそういう方に案件を依頼することはありませんね。

そこまでしっかりとコンセプトを考えている企業というのは、同業者の中でも珍しいのではないでしょうか。

下田:おそらく大企業の研修案件では、たくさんのクラスを同時並行で回すことになると思うのですが、その時に同じコンセプトで研修ができる講師を開講クラスの数だけ集めるというのは不可能だと思うんですね。その点、弊社のお客様は中堅企業がほとんどで、半年以上前から情報交換をしてお客様のニーズや採用方針を把握した上で講師もアサインするので、コンセプトに沿った研修ができるわけです。研修内容を考える際に、お客様の会社の方針や風土、目指したい経営の方向や評価制度と整合性を取るようにしていることも、研修がその場限りのものに終わらず、より有意義なものになっている要因の一つだと思います。こういう仕事の仕方は手間も時間もかかるし割に合わないと思う方もいるかもしれませんが、長い目で見るとクライアントに対して提供できるサービスが増えていって長期的なお付き合いができるようになるので、結果的には新規開拓にかけるコストを削減することにも繋がるんですね。
かつ、何よりお客様には喜んでもらえる。割に合わないという考えの裏にあるのは「楽して儲けたい」という気持ちだと思うんですが、そう考え始めると長期的な仕事には繋がらないと思いますし、それ以前にまず単純に、自分の幅も広がらないしスキルも上がらないというのは面白くないなという気がします。

ー長年に渡って価値を出し続けるための秘訣は何でしょうか?

下田:正確に言うと、価値を出し続けているのはお客様で、弊社はそれが可能になる場を創っているだけなんですね。強いて言うなら、他の業界での事例などはお伝えできますが、経営者や管理職のようなその道の専門家に対して教えられることなんて本当はないはずです。私の場合は経営者団体に入っていたので、いろんな業界のトップの方々から拝聴した情報を差し支えない範囲でお話して、お客様が価値を創出できる場を創っただけだと思っています。

前向きに取り組む姿勢を大切に、「人が輝きつづける場」づくりに邁進する

独立コンサルタントとして成功するために最も重要なパーソナリティーとは何だと思いますか?

「プランド・ハプン・スタンス」理論というのをご存知でしょうか。訳すと「計画された偶然」ですが、そういう考え方を持っているかどうかが重要だと思います。先程の「割に合う、合わない」の話で例えると、「割に合わない」と考えてしまうのは「自分がこれだけのことを提供しているのに、それに見合うだけの報酬がない」からだろうと思うんですが、例えばそういう状況を作った自分に足りない点があったのであれば、それは今後に活かせる気づきになりますし、一見すると割に合わなそうな仕事でも、突き詰めてやっていく中で予想もしていなかった価値を生み出せることもありえます。そんなふうに前向きに考えて取り組む姿勢は、仕事を依頼した側からすると「こんなに大変な仕事を気持ちよくやってくれた」という好印象になって、結果的にリピートや紹介にも繋がると思うんですよね。ですので、そういった前向きな考え方ができることが一番大事なのではと思います。

独立後、働き方において一番大きく変わった点は何ですか?

下田:お客様を選べるようになったことですね。弊社とお客様との関係は、仲間関係といったら語弊があるかも知れませんが・・例えば、仲の良い友達が困っていたら何か力になれないかと普通は考えると思うのですが、そんな関係性だと思っています。今はそんな関係を築けない相手とは業務上お付き合いをする必要がないので、そこが一番楽なところですね。お客様を選べるということは、しっかりと信頼して仕事を依頼してくれるお客様がいて成り立っているからこそなので、本当に恵まれているなと思います。

今後の事業展開について教えてください。

下田:弊社のミッションは「人が輝きつづける場の創造」なので、研修や経営コンサルティングだけではなくて、例えば経営者が集まってお互いに提携して事業を拡大していくような場づくりもしていきたいですし、関わった人たち同士が相手のことを大切に思って相手のために何ができるかを考えられるような、そんな関係性を広げていきたいと思っています。あとはテニスを中心としたスポーツ振興や、地域のお祭りを中心とした伝統文化振興という領域での場づくりも、引き続きやっていきます。自分だけではなく、世の中の人みんながそういった「場づくり」について考えたり行動したりできるようになったらいいなと思っています。

本日はお忙しい中、貴重なお話ありがとうございました!

「お客様は”仲間”のような存在」「価値を出しているのはお客様で、自分たちはそれが可能になる場を創っているだけ」「楽して儲けたいという考え方は、自分の幅が広がらずつまらない」という下田さんのお話の端々から、”儲ける”ために働くのではなく”相手と自分を共に成長させる”ために働くのだという熱い思いが感じられました。フットワークが軽く何事にも前向きに取り組んでいらっしゃる下田さんのお話は、現在独立・起業を志している皆さんに多くの刺激を与えてくれたのではないでしょうか。